レンジャー前田の写真講座 第9章【カメラの露出】

9章この先もっとカメラを理解するには避けて通れない
カメラの“きほん”『露出!』を理解する

 

第6章では、『ホワイトバランス』を自分で変えるようになりました。

第7章では『ISO感度』を自分で制御する! 絞り!?そして、前回の第8章では『露出補正』を活用して、写真の明るさをコントロール出来るようにと説明しました。 実はホワイトバランスを除いて『ISO感度』『露出補正』は大きく『露出』に関係します。

『シャッタースピード』とは!?『レンズの絞り・F値』って!? 今回は最初に説明したかった…でもちょっとややこしい…しかし理解すれば思い通りにカメラを使いこなせる。今回は、そんな『露出』について説明します。

 

私の講座でも初めのうち、この『露出』の説明を最初の方でしていました。

これが頭では理解しても、なかなか頭に叩き込むまでは次に進んでも余計にややこしくなるみたいで、最近は、まずカメラ本体に付いているホワイトバランス、ISO、露出補正などの機能から説明してるんですね。

このWEB版写真講座でも、第9章で、ようやく『露出』について説明します第2章でも説明しましたが、フィルムカメラもデジタルカメラも、レンズから入った光の情報をフィルムで感光するか、レンズから入った光をイメージセンサーで捉えて被写体を写し出します。

『露出』とは、そのレンズから入ってくる『光』の強さが『シャッタースピード』と『レンズの絞り・F値』の二つに関係するものなんです

わかりやすく説明していくために、この講座では、光の情報とレンズとカメラ本体を下記のように置き換えて説明していきます。

  水道とコップ

太陽の光や、照明などの光に照らされた被写体の情報 水道の水圧
光の情報を捉えるカメラ本体の中のイメージセンサー(図の緑の部分) コップ
レンズと絞りを(レンズなどに組み込まれている光の通る道の径を調整する窓) 水道の蛇口とハンドル(水栓またはカラン)

とします。  

 

①シャッタースピードとは!?

水道の水圧として考える!(絞り一定として)

suido2. 水圧(光の強さ)が強いと 水がコップに早く入る = シャッタースピードが早い

水圧(光の強さ)が弱いと コップに入る時間が長くなる = シャッタースピードが遅い

※ つまり光(水圧)が強いほどシャッタースピードが早くなります。(コップがすぐに一杯になる)

 

 

②絞りとは? 

絞りとは 水の出る量(光の入る量)を調整しますsuido2.のコピー

◉ カランを開ける(カメラの絞りを開ける)と 水がコップに早く入る = シャッタースピードが早い 光が入りやすいため短時間に多くの光を取り込める

◉ カランを締めていく(絞りを絞っていく)と コップに入る時間が長くなる = シャッタースピードが遅い 同じ量の光を取り込むために時間が多めにかかる

※ つまり絞り(カラン)を開けるほどシャッタースピードが早くなります。(コップがすぐに一杯になる) この上の二つの画像で、まずシャッタースピードと絞りの大体の理屈はご理解いただけたかと思います。

水圧(光の情報)が多いとシャッタースピードが早くなりますが、蛇口のカランを(絞り)を絞って行くにつれ、シャッタースピードは遅くなっていくので、この『シャッタースピード』と『絞り』には、関連性があるということがわかります。


しかし、いくら露出を理解したからといって、カメラの露出設定をオートのままとか、シーンモードなどのままではカメラを操れません。mode2

ほとんどのカメラに『マニュアル設定(M)表記』『絞り優先(A)や(AW)表記』『シャッタースピード優先(S)や(TW)表記』などのモードがあり、それで、シャッタースピードや絞りを調整できます。スマホのカメラアプリでもシャッタースピードと絞りを操れるアプリも色々出ていますので、ぜひ試してみましょう。

  また、シャッター速度を設定するダイヤルや、絞りを設定するダイヤルがどこにあるのか!? これも、カメラメーカー各社や、コンデジから一眼レフまで場所は様々ですのでの、まずはお手持ちのカメラのマニュアルなどでどこにダイヤルがあるか探してみてください。

これを覚えるて使い慣れると、頭の中で描いたイメージ通りの写真が、きっと撮れるようになりますよ!  

 

では、シャッタースピードを操ると何が変わるか!? 

KUN_61601 KUN_61621

上の二枚の写真は、同じ場所、ほぼ同じ時間帯に意図的にシャッタースピードを変えて撮った写真です

左は、波の流れる1/100秒の瞬間が写っています。

また右は2秒の間シャッターが開いている状態で、その間の波の動きが記録されるので、幻想的な水面イメージで写ります。

上の写真は、同じ明るさのシーンでのシャッタースピードの違いで、どう写るか!? ということですが、その時のシャッタースピードを変える手段は、

①シャッタースピードと関係する絞りを変える

シャッタースピードを早くする時は絞りを開けたり、遅くする時は絞ったりする。

②ISO感度を変える。

早くする時は800や1600など高い数値の高感度に、遅くする時は100や200にする。

③レンズにNDフィルター(サングラスのような色の濃いフィルター)を付ける。

NDフィルターを付けると、外光や照明が暗くなったのと同じで光の情報が少なくなるので、シャッタースピードは遅くなる。

 

taki

 

よく川や滝で撮られているような錦糸を流したような撮り方も、このシャッタースピードの違いを利用して撮ります。

コップに注ぐ時間(シャッタースピード)が早いと流れの飛沫までもが瞬間に写り、コップに注ぐ時間(シャッタースピード)が遅いほど、錦糸が流れたように写ります。  

 

次に外の明るさが違う時間帯で撮った写真で、シャッタースピードの違いを見てみましょう。

suido1-3 suido1-4

 

夕刻と夜間、同じ飛行場から撮った写真です。

◉ 左の夕刻はまだ光がある時間帯、少しシャッタースピードを早めに撮って飛行機が止まったように写しました。

◉ 右の写真は夜間、飛行機が離陸してからファインダーの外まで飛んでいく間、シャッターを開けているので飛んでいる間の飛行機の明かりが軌跡となって写っています。

このように、シャッタースピードを操れるようになると、「こう撮ってみよう!」「こんなイメージにしたい!」というように、頭の中で描いたイメージ通りに撮れるようになりますよ!  

 

では!絞り(F値)を操ると何が変わるか!?

絞りとはレンズの中に組み込まれている、F1.4、F2、F2.8、F4、F5.6、F8、F11、F16のように表される、光の通る道を広げたり小さくしたりして、光の情報量を調整する仕組みのものです。

suido9-1 絞り値を大きく(F8やF11など)すると、絞りが絞られてレンズを通る光が少なくなり、絞り値を小さく(F1.4やF2.8など)すると、絞りが開かれてレンズを通る光が多くなります。

たとえば、絞り値をF2.8からF4に変えると、レンズを通る光の量は半分に減り、イメージセンサーに届く光の情報も半分の明るさになります。

 

では、絞りをそれぞれ変えたて撮った作例写真を三点紹介します。

hishakai3

赤い矢印の場所のように、水道のカランを開放したような絞り開放近くの写真です。 その分、シャッタースピードが早くなりますので、この写真のように手前の梅の枝付近だけにピントが当たります。  

hishakai2

2枚目の写真は、赤い矢印の場所、絞りの開け方が真ん中あたり(F5.6程度)です。 光の情報が通る穴が狭くなった分、少しシャッタースピードが遅くなりますので、その分だけ手前の梅の枝より後ろにもややピントが合ってきました。  

hishakai

3枚目の写真は、赤い矢印の場所、絞りを一段と絞って撮っています。 そうすると光の情報は、この小さい穴から通るので、水道のカランを締めて、コップの水が入る時間が遅くなっていくのと同じで、シャッタースピードが遅くなり、背景のシルエットまでわかるようになりました。

例えば!

◉目を閉じた状態から、一瞬目を開けて目の前の花瓶の花などを見たら、花だけが映像として脳に記録されます。

◉目を閉じた状態から、3秒ほど目の前の花瓶の花などを見ると、花以外の少し他の情報もぼんやり目に入ってきます。

◉目を閉じた状態から、10秒ほど目の前の花瓶の花などを見ると、背景や周りの情報も目に入ってきます。

※ この3枚の写真のようにピントの合っている奥行きのことを『被写界深度』といいます。 現実にはピントが合うのは一点ですが、ややあっている距離が狭いほど『被写界深度が浅い』、またピントがややあっている距離が広いほど『被写界深度が深い』といいます。  

 

それでは!密接な関係のシャッタースピードと絞りの関係をおさらいです

 

tekisei

光の情報を捉えるカメラ本体の中のイメージセンサー=コップでしたので、コップの水が足りない場合は、黒く潰れた所のある暗い写真『露出アンダー』で、水があふれてしまっているのが白く飛んでしまっている写真『露出オーバー』の状態をあらわしたものです。

シャッタースピードと絞りの関係が、どちらもコップちょうどに入っている『適正露出』とした場合! 下の図のように表の上の段、絞りの数値と、表の下の段、シャッタースピードの数値関係は比例します。

  suido12  

上の図解では、蛇口のカランを開け切った状態(F1.4)の時、コップに早く水が入り、締めて行くに従ってコップを満たす時間が少なくなる・・・シャッタースピードと絞りの関係 しかし、この比例する数値は絞りがF1.4の時シャッタースピードは1/4000とか決まっているわけではなく、光の量によって変わります。

 

 

suido12-4

 

例えば、暗い場合(光の量が少ない)とF1.4の時シャッタースピードは1/15のように変わるし    明るい外光や、明るい室内の場合(光の量が多い)とF1.4の時シャッタースピードは1/4000のように早くなります。

 

suido125

 

では!外光が暗い、また室内が暗いのに、絞りを絞りつつもシャッタースピードを上げたいとか、外光が明るい、また室内が明るいけど、絞り開放付近にして、背景をぼかしたい時はどうするかというと、第7章で説明した『ISO感度』があります。 感度  

それを水道とコップに表すと、こうなります。

そして『露出補正』は、ISOが一定で、モードが『絞り優先』の時に、シャッタースピードを変えたり、『シャッタースピード優先』の時に絞り値(F値)を変えてくれます。

今回説明しました『露出』の関係を理解すれば、あらゆるシーンに出くわした時、あなたが、「こう撮ってやろう」「こんな感じに撮りたい」とカメラに指示したとおりに映し出してくれますよ! ぜひ、シャッタースピードを上げて噴水の水の瞬間を止めて撮りたいとか、清流の流れを錦糸が流れているように撮ってやろうなど、試してください。

 

SMK_0926 SMK_2961

 

Matome2これで、『露出』には『シャッタースピード』『絞り』『露出補正』『ISO感度』が絡み合って関係しているのが、おおよそ理解してもらったかと思います。 なかなか頭の中で理解しても、実際「シャッタースピードを上げて瞬間を撮ってやる!」とか、「絞りを開けて背景のぼけた写真を撮ってやる!」と思っても初めのうちは頭がこんがらがるのも無理はありません。(実際私も初めのうちは「どうやったっけ!?」と考えたり、当社のスタッフも初めのうちは迷っています) これも、反復していくうちに、きっとあなたも、思い通りの写真が撮れるようになりますよ!

次回は、第10章

夜景や星空、花火の撮り方!
露出を理解すれば、夜景も思い通りに!

 

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レンジャー前田の写真講座 第8章【露出補正】

8章あれ!? 撮ったら見た目より暗く写ってしまう…
露出補正を理解しよう!

 

第6章で解説したカメラのホワイトバランスも、第7章のISOもカメラ任せにしないで自分で細かく設定出来るようになりましたか!? 今回は『露出補正』 korer写真を撮った時、実際に見てるシーンより撮った写真が暗く写ってる… またはこんなに明るくないのに… って、思ったこと ありますよね! 時に露出オートは意図しない明るさに写ってしまったりします。 今回、カメラ任せから解決するのはAE(自動露出)です。この自動ってのもやはりクセもので、そう思い通りには動いてくれません。 しかし、解決策はあります。ほとんどのデジタルカメラには露出補正機能というのが付いています。その露出補正という機能を使えば、簡単に写真の明るい、暗いを調整できるのです。 今回は、その仕組みなどを解説していきますね!

 

まずAE《(AE=Auto Exposure)自動露出》の実験をしてみましょう

お手元のスマホ(機種にもよりますが)やコンデジなどで、簡単にその仕組みがわかります。 

IMG_1052

実験の仕方は、白い紙と黒い紙を並べたものをスマホモニターでみます。

または、白いものと、黒いものが画面半物ずつになるように、スマホのカメラアプリを開いて、モニターでどちらかにピントを合わせるために指で黒いほうか、白い方のどちらかを指でタップします。

左の写真は、白い紙の上に置いたニコンのカメラを置いたところを私のiPhoneのカメラアプリで覗いたところです

要は白い紙と黒い紙を半分づつ画面に映すだけでOK!    

まず、カメラの黒い部分を指でタップ! するとどうでしょう!! 一瞬にモニターが急に明るくなりました。 (またはコンデジなど黒い部分にピントを合わせてみてください) 今度は、下に敷いた白い紙を指でタップ! 今度は、一瞬にモニターが薄暗くなってしまいました。 (またはコンデジなど黒い部分にピントを合わせてみてください)   どちらも、タップした黄色い枠の部分はグレーで同じような色になったでしょう! 実は、これがAE(自動露出)の原理です

IMG_1052-3
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 今度は、下の画像で説明します。

18%グレー

まず、カメラは太陽などの光源に照らされた光を計測し、その明るさをカメラのAEが反射率18%グレーに合わせて画像が作られる様に設計されています。

その時、人なら「白いものは白い!」「黒いものは黒い」と頭で考えられ、見たものもそう見えますが、ホワイトバランスの章でもお話ししましたが、カメラには基準となるものに対して写りが変わってしまいます。

カメラの中にあるAE(自動露出)装置が瞬時に被写体の明度を感知して、イメージセンサーで画像データに変わるのですが、その明度の基準が『反射率18%グレー』と言うものなのです。

※今回はそのAEの範囲を決める測光モード(平均測光やスポット測光等)は、また次回に説明します ◉ 反射率18%グレーって? 何%ぐらいの濃さのグレーかということでは無くて、反射率が18%の無彩色で、人の肌や一般の植物など、反射率が18%と言うことで、人を綺麗に撮る!など、ごく一般の色基準をさします。 それぞれ二枚の写真を、まずモノクロに変換して、どんどんぼかして行ったのが下の写真です どうでしょう!? 極限までぼかした写真は、元データが明るい部分、暗い部分が均等にあれば、このように同じようなグレーになります。

 

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しかし、暗い部分が大半を占めたシーンでは黒に近い暗いグレーになるし、明るい部分が大半を占めたシーンでは、白に近い明るいグレーになります。それをカメラのAEは、黒に近いグレーも中間ぐらいのグレーに持って行き、黒っぽいグレーも中間ぐらいのグレーに持っていく特性があります。 そのため、極端な黒はグレーのように明るく、白はグレーのように暗くなってしまうのです。

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左写真のように見える森を撮ったら、右側の写真のように見た目より明るく色が抜けて見えたり、

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左写真のような雪景色を撮ったら、右側の写真のように見た目より暗く写ってしまいます。 ※「明るく撮りたい!」「もっと暗く撮りたい!」など写真の明るさの好みは人それぞれですので、適正露出はコレだ!! という基準がこうだ!というもではありません。

 

◉ では!露出補正とは?

まずは、お手持ちのカメラの露出補正できる場所がどこにあるかをまず探しましょう。

hosei2 imgresのコピー の各社共通マークが目印 ・・・-1.0、-0.7、-0.3、0.0、+0.3、+0,7、+1.0・・・などのように表示されています。 hosei   hosei27

 

(-1.0とはカメラが決めた適正露出より1段分暗いということ)一段上げると撮像素子に当たる光の量が2倍になり、一段下げると2分の1になります。

自分の思い通りの明るさに調整しよう 「もう少し明るく撮りたい」「もう少し暗く撮りたい」などイメージしていた仕上がりに応じてきめ細かく露出を調整するのに「露出補正」を使うことで、明るさの微調整をすることができます。

 

Matome2前章で、それぞれホワイトバランスの設定や、ISO感度の設定などカメラ任せにせずに、微調整が出来るようになったと思います。 頭で描いたイメージ通りに撮れるほど、カメラはそれほど賢いものではない! 今度は露出補正機能を使って明るさを操ることを解説しました。 撮りたいと思った風景や被写体を見ただけでどういう露出補正でイメージどおりに撮影するか判断できるようになるには、まず反復して自分のものにしてしまうことです。 最後に重要なことは、設定を変えたら必ず元に戻しておくこと! ホワイトバランスを変えたら最後にオートに『戻す!!』ISO設定を変えたら、まず200程度に『戻す!!』そして、今回の露出補正を上げ下げして撮ったら±0に『戻す!!』 以上をお忘れ無く~♪

次回は、第9章

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